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東京電力福島第一原子力発電所の多核種除去設備処理水(放射能汚染水)の取扱いに関する意見書を提出しました

廃炉・汚染水対策チーム事務局 宛
送付先メールアドレス:takakushu-iken@meti.go.jp

東京電力福島第一原子力発電所の多核種除去設備処理水(放射能汚染水)の取扱いに関する意見書

2020年4月16日
生活協同組合パルシステム新潟ときめき
専務理事 長崎 清一

東京電力福島第一原子力発電所で発生している「ALPS(多核種除去設備)で処理した放射性物質を含む水」(以下「放射能汚染水」という)について、貴省に設けられた「多核種除去設備等処理水の取り扱いに関する小委員会」(以下「小委員会」という)は、水蒸気放出よりも「海洋放出の方が確実に実施できる」とする報告を発表しました。

生活協同組合パルシステム新潟ときめきは、食と農を基本とした生活協同組合の理念に鑑み、以下の理由から、放射能汚染水の環境中への放出(海洋放出、水蒸気放出を問わず)に反対します。

【理由1】トリチウムの安全性については意見が分かれています
放射能汚染水に含まれるトリチウム(三重水素)の影響については専門家でも意見が分かれています。
トリチウムは化学的には酸素と結合してトリチウム水として存在します。政府は、「トリチウム水は水と同じ性質を持つため、人や生物への濃縮は確認されていない」としています。しかし、トリチウム水が食物や飲み水を通して体内に取り込まれた場合、その生物学的半減期は約12日、9割が体外に排出されるまでには40日かかるとされており、また、植物の光合成によって有機結合型トリチウムとなった場合にはさらに長期間体内に留まると言われています。そのうえ、トリチウム水を継続的に摂取した場合には、さらに長期的・継続的に体内に残留して放射線を出し続ける危険性があります。
トリチウムはヘリウム3へとベータ崩壊しますが、その過程で放射線であるベータ線を放出します。ベータ線は飛距離が短いのですが、そのことは言い換えれば、細胞内に入ったトリチウムは極めて近い範囲(その周辺組織)に集中的にベータ線(放射線)を浴びせ続けることになります。ベータ線そのものの影響に加え、その強い電離作用によって、周辺の細胞にダメージを与える危険性があります。ちなみに、そのようなベータ線の性質を利用した「近接照射療法」という癌の放射線療法も存在します。
さらに、トリチウムがDNAを構成する水素と置き換わった場合には被ばくの影響が強くなること。DNA内のトリチウムがヘリウム3に壊変した時には、DNAが破損する影響などが指摘されています。

【理由2】代替案があります
たとえば原子力市民委員会(東京都新宿区)は「大型タンク貯留案」、「モルタル固化処分案」を提案しています。敷地としては、福島第一原発の敷地北側7・8号機建設予定地や、後背地などが提案されています。小委員会の議論をみる限り、こうした提案について十分検討したとは言い難い状況にあります。
環境中に放出するのではなく、陸上で保管し続ける手段を講じるべきであると考えます。

【理由3】地元漁業者が反対しています
有力とされている海洋放出が実施された場合、もっとも影響を受けるのは、福島県および近隣県の漁業者でしょう。
福島県漁業協同組合連合会の野崎会長は、「地元の海洋を利用し、その海洋に育まれた魚介類を漁獲することを生業としている観点から、海洋放出には断固反対であり、タンク等による厳重な陸上保管を求める」としています。
茨城県の漁業関係者も反対の意思表示をしています。
こうした漁業関係者の強い反対を無視するべきではありません。

【理由4】影響は、海洋汚染にとどまりません
海洋に放出されたトリチウム水は、通常の水と同様、水蒸気となって雲となり、雨や雪となって地表に降り注ぎ、川や地下水を通って海に流れます。こうして放射能汚染の循環が生まれ、陸上も広範囲に汚染されることになります。
私たちの住む日本列島は、東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、既に(地域ごとに程度の差はあれ)汚染されていますが、さらにトリチウム水汚染が上乗せされるわけです。
そのような意味では、福島県内に住まない私たちもまた当事者であると言わざるを得ません。

最後に、経済産業省は「地元をはじめとする幅広い関係者から意見を聴取する」としていますが、一般の消費者からの疑問を受け、それに対して回答をし、意見を聴取するような場は設定していません。しかしながら、少なくとも日本に住むすべての者が上述のように当事者であり、その観点から、福島県外においても公聴会を開催し意見陳述人を広く公募することを求めます。
一方、現在は新型コロナウイルス感染症の流行で、大規模な集会を開催しづらい状況です。したがって、少なくとも新型コロナウイルス感染症の流行が終息するまでの間は意見聴取手続きを中断し、その間は陸上保管を継続すること。併せて、その間に上述のような陸上保管手段の確立に向けて努力されることを強く要望します。

以上

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